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この30年間の保育の改革を振り返る。(3-2)

-白梅学園大学大学院・特任教授無藤隆先生のFace Book拾い読み

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(3-1)の続き

認定こども園の導入に伴って
20年改訂から今に至る10年間は、認定こども園の動きに翻弄されてきたといえるでしょう。スタートは、幼稚園を使って待機児童解消の一部を担ってもらうという実情もあり、幼稚園の生き残りのためとみられていました。そういう面ももちろんありましたが、同時に保育所の教育的な意味でのレベルアップという意味も含まれていたと思います。

総合施設モデル事業から認定こども園となり、子ども・子育て支援新システム(新たな認定こども園)と至る中で、子ども・子育て関連3法は3党合意のぎりぎりの中でようやく成立しました。私も子ども・子育て支援新システムの検討に携わっていましたが、国会審議時点では、我々の手を離れてしまっていましたので、ハラハラしながら見ていました。トップレベルの政治家と官僚の決断でした。あれだけの法律を作り上げるのは大変な作業だったと思います。法律が通ると、次は実際に子ども・子育て会議が始まり、具体的な制度化の動きとなっていきました。見えている会議だけでも多いのですが、同じような数の打ち合わせもありましたので大変でした。途中、大きな反対集会なども開かれ、委員宛に反対の投書もたくさん寄せれました。そのため、認定こども園にインセンティブをつけようとしても、これだけ反対が多いとできないということになります。しかしながら、地方では単体では運営できないのでこども園になりたいという意見を聞いておりました。反対運動に押されて、公定価格をじっくり議論する時間はあまりありませんでした。例えばもっと私立幼稚園が新制度に移行しやすい公定価格を初めから設定するといった交渉もあったのではないかと思われます。

預かり保育や認定こども園がひろがってきたことから、長い時間の保育をどうするか、ある意味カリキュラムを考える必要が出てきました。2009年に幼小の接続に関する検討会の報告をまとめましたが、あのころは、小学校教育と幼児教育との流れを本格的に作らないと幼稚園はもたないという動きがあったのです。義務教育化や5歳児就学などの意見も出ていました。その中で、小学校教育の前倒しということではなく、何とか幼稚園教育を残そうとして、現在の「資質・能力」の考えに近い理論をまとめていました。「学びの芽生えの時期から自覚的な学びの時期への円滑な移行」「幼児期から児童期にかけて求められる「三つの自立」(学びの自立、生活上の自立、精神的な自立)と小学校以降における「生涯にわたる学習基盤の形成」(学力の三つの要素)」などです。また、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を12項目挙げ、それが到達目標でない扱いをどうするかについても整理しました。

今回の改訂は、それを踏まえてやるしかないと関係者は認識していました。その意味では、改訂・改定メンバーの人選もよく考えられていました。世界情勢の中でも教育の重要性は高まっています。狭い意味での学校教育に吸収される恐れがある中で、幼児教育のアドバンデージをいかに保つかが課題でした。

もちろん保育所としては3歳未満児の保育も重要です。今回の保育所保育指針における乳児保育の記述はよく考えられています。それまでの研究成果を踏まえながらも5領域につながる形にまとめられています。0歳からの幼児教育が始まることが表現されていると思います。

そして、3歳以上については、幼稚園教育要領や保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の3つの資質・能力の書き方が幼児に合わせた書き方となって小学校以上につながっていることが示されています。「思考力の基礎」「知識の基礎」「学びに向かう力」といった幼児らしい言い方に変えました。それと同時に、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿という表現で調整しました。「姿」という言葉に意味があり、これで到達目標的ではないことが表現されています。

それまでは、4・5歳児の育ちについてポジティブなイメージを持ちにくかったと思われます。この時期の子どもたちをどう表現しようかと東大の秋田喜代美教授と議論して、「学びに向かう力」という言葉を作りました。学校教育の準備段階という状態を幼児期の独自性を保ちつつ、その後の土台の時期というように表現したのです。3つの資質・能力の一つととらえましたが、この考えを小学校以上にも当てはめて3つの資質・能力を構造化することができました。

幼稚園や保育所、こども園では、単に子どもを預かっているだけの施設ではありません。何をどう育てるのか重要なのです。幼児教育施設としての位置づけを明確にした保育所において、こうした専門性がないと親に代わって預かるだけの施設になってしまいます。保育所においては、ともすれば012歳の子どもの姿がイメージされがちですが、3・4・5歳をどう保育していくかも重要になっているということです。

何度かの改訂・改定を通して、幼児教育・保育は結構複雑で、いろいろ勉強して専門性を身につけなくてはいけないという認識が広がってきたのではないでしょうか。今回、処遇改善に連動して、保育士もしっかり研修をするような仕組みになりつつあります。幼稚園では法律的には研修の義務が課されていますが、それをどう実現するかが問われています。これは技能・経験を有する保育者への処遇改善の予算が付いたためですが、逆にいうとこうしたチャンスがなければ保育者の処遇はなかなか上げられなかったでしょう。これまで研修に出す経験がなかった保育現場にとって対応するのは大変でしょうが、私立幼稚園にも研修の充実に乗りだしてきていますから、キャリアに応じた研修の受講が定着していくようになると思います。よく勉強している園では保育を公開したり、ほかの園の保育の見学に出向いています。

こうした質を高める動きが進む中で、今後は、ノンコンタクトタイムをどう入れるかが大きな問題になるのではないでしょうか。キャリアアップ研修を受講するための時間をなかなか確保できません。その意味では、今後、インターネットを活用した研修を増やす必要があるでしょう。また園内研修についてもある一定の基準のものを認めるといったことも考えられます。そうした取り組みをサポートできるように幼児教育センターの整備が進められています。

※(3-3)に続く