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この30年間の保育の改革を振り返る。(3-1)

-白梅学園大学大学院・特任教授無藤隆先生のFace Book拾い読み

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この30年間の保育の改革を振り返る。
「遊育」2019年4月9日号、No.7、所収(一部改変)

平成元年度からの改訂を振り返る
平成元年くらいから、それぞれの担当者の意識では、幼保一元化までは考えていなかっただろうが、幼稚園・保育所をもっとつなげなくてはいけないという意識はあったと思います。特に保育所のほうでは、保母が保育士となり児童福祉法に定義づけられたことは大きく、それらを踏まえながら保育所保育指針が告示化され、今回、幼保の教育内容の整合性が図られました。平成20年の保育所保育指針改定の際は、意図的・計画的に保育を行うといった文言が入り、「保育課程」など教育を意識した言い方となりました。「保育課程」という表現は、よく通ったと思います。課程というのはカリキュラムのことで、学校教育の用語ですが、保育課程とすることで学校教育ではないが計画的な保育という狙いが表現されています。こうした改革は一機にはできませんから、一段一段段階を踏んできたわけです。

現実問題として、幼保の違いは小さくなっていました。ここ数年で幼保の小学校入学前の5歳児の就園率は半々となるなど(学校基本調査(平成30年度)では、幼稚園の就園率は44・7%、幼保連携型認定こども園は11・9%)、保育所を利用する子どもはどんどん増えています。平成10年以前だと幼稚園の就園率は6割程度(学校基本調査(平成10年度)では62・2%)はありました。

その一方で、幼稚園教育の地位を上げていく必要性も高まっていました。平成18年に改正された教育基本法で、第11条に幼児期の教育が明記されました。幼児期の教育は家庭教育が中心ですが、幼稚園や保育所も含んでいます。その直前の平成15年、中央教育審議会で幼児教育を中心的なテーマとしましたが、これは幼児教育・保育界でも戸惑いを与えたでしょう。平成17年の答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」が、今に与える影響は大きいものがあります。担当者の役割は大きかった。答申の中には幼児教育センターも入ってますし、現在の東京大学発達保育実践政策学センターも延長線上にあるといえます。ここまでに何回もトライしてきたのです。

また、平成9年から私立幼稚園の預かり保育に対する補助事業がスタートしました。それを受けて、幼稚園教育要領に教育課程外の教育活動ということで触れることとなりました。突然の方針転換ですが、エンゼルプランなどがスタートする中で、幼稚園に対する支援が必要になってきていました。預かり保育については、元年度の幼稚園教育要領改訂に携わった委員の方々はことごとく反対されましたが、そこからかなりの年月を経て現在では、私立幼稚園の大部分で預かり保育を実施するようになっています。預かり保育については、必要もないのに預けるという親の問題は別として、共働きが当たり前になりつつある中で、幼稚園の対応が求められた結果です。

幼稚園教育要領自体を考えると、平成元年で子ども中心主義を明確にして以降、現在に至るまでそれを受けついでいることは確かです。その大きな枠組みの中で調整してきました。10年度、20年度改訂では、教師の指導性を明確にしました。それがないと教育ではありません。専門家である教師がいるからこそ学校教育なのです。その意味では、あまりに極端な子供中心主義はカリキュラムを否定していることになります。

元年の幼稚園教育要領改訂時には、一時期、極端な保育が散見されました。そのころ、私も初めて文部省の仕事に携わることになったのですが、「子どもの活動に教師は手を出してはいけない」という認識が広まっていました。幼稚園教育要領に、「環境を通して」と表現されていましたので、教材や遊具、自然環境を含めて豊かにするということは理解されていましたが、環境の構造的な在り方はあまり検討されてきませんでした。そこを修正して教師の指導性を打ち出そうとしたのです。「環境を通して」保育する意味を明らかにしようとしたのです。モノの持っている潜在的な教育の価値にも目を向けました。
ちょうどそのころにレッジョ・エミリアの「子どもたちの100の言葉展」(ワタリウム美術館で2001年に開催)が開かれ、95~96年ごろにはニュージーランドのテ・ファリキやラーニング・ストーリーなども日本に紹介されるようになりました。アメリカでは、プロジェクト型学習も広がっていました。

その一方で、小1プロブレムの問題が発生し、小学校教育の準備が必要との議論がある中で、幼児教育は小学校教育の土台ということでつながりは大事だが、幼稚園側として接続期の在り方をどう表現するかと考え、幼稚園教育要領の中にプロジェクト活動的なものをいれていこうと考えました。そこで、20年改訂の時に、小学校との違いも明確にしようと、「協同的な学び」という言葉を入れようと提案しましたが、委員のかなりから反対されました。

これは、協同して遊ぶ中に学びがあるという意味ですが、あまり「学び」の側面が強すぎるということで、「協同する」といった穏やかな表現に落ち着きました。ただ、子ども理解と評価の指導資料では「協同的な学び」という言葉は入れました。協同的な活動を強調することで、小学校とのつながりを図りながらも幼児教育の独自性を確保して、質を上げていくカリキュラムを示そうとしたのです。ある意味で、20年改訂が一つの完成形だと思います。この完成形があって、保育所保育指針も幼稚園教育要領と整合性を図ることができました。

※ (3-2)に続く