>  > 発達心理学会・質的心理学会合同シンポジウム「質的研究のガイドライン」(2-2)

サービス二ュースService News

一覧へ戻る

発達心理学会・質的心理学会合同シンポジウム「質的研究のガイドライン」(2-2)

-白梅学園大学・無藤隆教授がノートを公開

画像1

発達心理学会・質的心理学会合同シンポジウム「質的研究のガイドライン」(2-2)
(2-1)の続き

質的研究の多様なあり方を査読者は知っているべきだ。質的研究といっても、そこには、グラウンディッド・セオリー(そこにもいろいろなタイプがある)、エスノグラフィー、解釈的、記述的、現象学的、などなどありうる。分類はいろいろにできるが、どれにしてもそこにあてはまらないものが出てくるだろう。その上、混合法が盛んになった。投稿者は当然様々なものをそれぞれに考えで使っている。その理由をきちんと述べることが必要だが。

その一方で、査読する側がその多様性を承知していなければならない。そもそも質的研究の方法論を学んでいない人が質的研究を査読するのは今や許されないと考えるべきだ(それは統計的方法を駆使した研究を差の検定しか知らない人が査読するのと同じだ)。質的なやり方を研究方法として使うことに弁明する時代は過ぎた。しかしさらに質的研究と言っても様々なので、当該の論文の著者の採用した方法が適切か、その方法論に乗っ取り、結果と解釈は適切に分析されているかを検討すべきなのである。あいにく、それができる人はめったにいない。そこで、査読者(となるような人)への質的研究の多様性に着目した研修が必要なのではないだろうか。学会で組織的にやってほしい。(多様性とは「質的研究ハンドブック」(翻訳版の)に出てくるような広がりにおいてである。)

初めの指摘にもどると、多くの保育系の学術誌では、実践者あるいは実践経験者また実践者と研究者の密な協力による論文が多く投稿される。それは上記のような質的な方法への自覚が足りない。多くが実践の場で検討を行ってきた試みを受けて、それを投稿論文とする。そうすると、第一に方法論的自覚が乏しいために、論文において透明性が確保されにくい。第二に先行研究の網羅的整理の習慣がない。忙しい合間にたまたま手に取ったものを記載する程度になっている。そこを変えていく必要がある。同時に、実践の広大な知恵に基づいて執筆されているのであり、その文脈をどう論文に組み込むかは容易ではない。おそらく独自のジャンルとしての展開も必要なのかもしれない。