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保育所保育指針における改定のポイント(2-2)

-白梅学園大学・無藤隆教授がノートを公開

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保育所保育指針における改定のポイント(2-2)

この10の姿にはいくつかの特徴があります。第一に、年長の終わりにいきなり出てくるものではなく、3歳くらいから徐々に育ってきて、特に年長の段階で顕著な発達となるというものなのです。もちろん、3歳の前の乳児期からの育ちを受けています。なお、子どものこの時期の発達のすべてを網羅しているわけではありませんし、他の区別の仕方もあり得るでしょう。その意味で使ってみたら便利ないわば共通の用語として提起されています。実際、小学校とも共有して、子どもの育ちを幼児期から小学校へと引き継いでいくときの参考資料にしやすいものにもしてあります。第二に、10の姿の各々の文章が「ようになる」と文末表現を統一してありますが、それはそれぞれの姿が完成形ではなく、それに向けて述べていく途中であるということを意味しています。途中ですので、さらに小学校以降指導をして伸ばしていってほしいものであるわけです。また、途中ということはこれという決まった特定の完成形は想定されておらず、そちらに向けての伸びて行きつつある姿を示すものです。あくまでプロセスなのです。第三に、例えば、最初の「健康な心と体」ですと、「充実感」「見通し」「自ら」などのキーワードが入れてあります。単に健康で元気が良いということだけを言っているのではないのです。保育の中で健康な心と体に向けて指導していく際に、子どもが充実感を感じているか、見通し・理由を分かっているか、大人の指示ではなく自分からやろうとしているかと問いかけて、保育としての質を上げていくべきだとしているのです。もちろん、幼児がそれらを十全にできるわけではなく、しかし同時に、多少ともそうなっていて、子どもに意味のある主体的な活動につながりながら、10の姿が実現していくのです。それは同時に、資質・能力の3つの柱が相互に絡み合いながら発揮され育っていくことでもあります。

なお、この幼児期の終わりまでに育ってほしい姿は個々の活動と一対一で対応するものではありません。おそらく一つの活動にはいくつもの姿との対応が見られることでしょう。運動遊びをすれば健康な心と体はもちろんですが、同時に、自立心や協同性や思考力や規範意識などともつながっていくはずです。小学校にはそういう具体的な活動の姿で子どもが学び育っていっているのだということを一人一人の子どもに即して伝えていく必要があります。

このように、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というのは、子どもを育てていく上での方向性であり、改訂はいわば構造化を図ったということです。しかし、資質・能力とは言っていなくても似たような考え方は既にありましたし、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というのは、実は5領域に書いてあることの整理です。このような構造化を図りながら、幼児教育としての共通性を確立したということです。日本の子どもたちは3歳から90何%が幼稚園か保育所か認定こども園に通い、その後小学校に行きます。それらの幼児教育施設以外に多少無認可の施設に行く子どももいますが、それを含めれば99%がそういう教育を受けています。しかも今、小学校前の幼稚園・保育園の在園率はほぼ半々であり、認定こども園が加わってそれが20%として、幼稚園・保育所が40%前後になっているのでしょう。もはや幼稚園だけとか保育所だけという言い方はできません。これは改訂の一番大きなことだと思います。

乳児保育の原理の明確化

3番目の改訂点は、保育所と認定こども園の問題でもありますが、「乳児保育」などの原理を明確にしたということです。3歳以降の5領域とは少し違いますが、改訂では1・2歳児については5領域の内容が示されています。身の回りにあるいろいろな存在の分類とそれとの出会いですが、その根本のところに子どもと周りの関わり方の在り方そのものがあります。それが乳児保育です。

ひっくり返して乳児保育から見ると、子どもの根本的な周りへの関わりがまずあります。それは子ども自身の心身への関わり、周りにいる人とりわけ自分を世話してくれる人との関わり、そしてまわりのあるものとの関わりです。特に人ととの関わりはその人が同時にその子どもを世話し保育する存在であり、故に相互的な関係にあります。それを指針では、受容的・応答的な関わりとしています。そこから情緒的な絆(愛着)が育ち、乳児が安心して保育の場にいて、少しずつまわりへの関心が広がっていきます。保育者は子どもに暖かい注意を向け、視線、表情、うなずき、声、言葉、もの、動作などを介してやりとりをするのです。それに応じて、また支えられて、子どもの興味はまわりのものに広がり、身体動作の発達がその探索を可能にしていきます。このように乳児保育の3つの視点である身体的発達、社会的発達、精神的発達は相互に関連し合いながら、伸びていきます。それが1歳代に入り、言葉が生まれ、表現が始まることにより少しずつ内容としての重みを増しながら5領域になっていくのです。こういう流れになっていて、小さい時期からの発達という基盤から上を構想していくと言うことができると思います。

保育所の在り方の専門性の確立

改訂で大きな意味があるのは、保育所の在り方の専門性の確立が過去30年間で進んだことです。直接的な始まりは児童福祉法上の保育士の業務規定です。それによって名称独占ということとともに、子どもを保育することと保護者支援という2つが規定されました。平成20年度の改訂において「保育所において保育を専門とする職員が保育する」という規定が新たに保育指針に入りました。これが専門性規定になるわけです。今回、それをさらに発展させる形で、たとえば「保育の原理」が「保育所保育に関する基本原則」になりました。専門性規定というのが、今回二重にできています。1つは保育士の専門性規定がはっきり打ち出されたことです。同時に保育所保育という言い方で「保育所の保育の固有性」もはっきり打ち出されました。「保育所保育の基本原則」では、「組織的・計画的」という言い方により学校教育に限りなく近づけておりますが、同時に、「養護」というものが常に基盤としてあって、いわゆる学校教育だけを言っているわけではありません。乳児期からのつながりや家庭の親の養育とのつながりをもちながらも、少しずつ学校教育に近い教育に発展させていくという考え方が、3回ほどの改訂を通してはっきりしてきたということです。

それを受けつつ、保育所保育の実践の向上というのは無視できないものがあると思います。世界的に見ても、幼児教育は全員が受けるべきだという発想があります。世界中で幼児教育を義務教育にしているところはごくわずかですが、義務教育に準ずるという扱いが急激に増えてきているので、それが21世紀に入ってからのトレンドでもあるというのが背景として大きいと考えられます。