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幼児教育の今後に向けて

-白梅学園大学・無藤隆教授がノートを公開

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※無藤 隆教授が、2018年12月21日金曜日にノートを公開しました。

《幼児教育の今後に向けて》

日本の乳幼児の教育(保育)は大きな歴史的転換点を迎えて、まさに激動している。それらは待機児童問題、地方における少子化と統廃合の問題、子ども・子育て支援制度と認定こども園の増加、保育者の待遇改善と専門性の向上などが挙がられる。それは単に時代の変化というのではなく、背景に世界中の研究知見の広がりがあり、乳幼児期の教育のあり方が将来の子どもの成長に大きく影響を与えることが分かってきたからである。そこで国・自治体の施策は多く3つの方向を進めようとしている。第一は量的拡充と調整である。待機児童をなくし、どの子どもも近隣の幼稚園・保育所・認定こども園に行けるようにする。第二は保護者負担の軽減であり、保育料の部分的無償化がそれである。第三は保育の質の改善・向上であり、そのための研究の拡大である。ここでは特に保育の質の向上に絞って、進めるべきことをいくつかに整理したい。

そのためには、何より保育者の専門性を上げていく機会を設けることであり、またそれを園としての保育の充実と向上につなげる組織的な取組としていくことである。

第一は研修を拡大することである。既に保育所・幼稚園・認定こども園についてキャリアアップ研修をすることで、経験者の待遇改善につなげる仕組みが動き出している。従来から各団体での研修を進めている。また初任者や10年次研修は公立幼稚園などでは義務づけられているが、私立などでも進めてよいことである。問題はそういった研修の場に出やすくすることであり、それが無理なら例えばネットによる研修などの工夫が必要になる。それは研修による単位修得が各々の年収の改善につながるという画期的な仕組みであり、いずれ数年の内に本格的に進められるようになる。それに向けての自治体と園での整備を進めねばならない。

第二、園外の研修の成果などを園内に持ち帰り、その保育の改善につなぐためには、園内で保育者同士が保育を見合い、検討する「園内研修」の場が不可欠である。まず、時間の確保である。例えば、午前の保育、午後の預かり保育、園バスでの送り迎え、掃除、教材準備、などなど保育者の仕事にはきりがない。それをすべて担任がこなすとなると、到底、保育を見直し、それについて話し合い、検討する時間は取れないだろう。まずはその時間を確保する工夫が必要である。多少とも人手を増やすことは必要かもしれない。できれば、午前の保育をわずかの時間でよいので、各担任が互いに見合えるとよいだろう。ある日は特定のクラスが素材となり、他の担任が交代で少しの間、活動を見るというやり方もある。

記録を取り、それを共有し、検討するという工夫も広がってきた。まず、簡単に記録を作るやり方がディジタルカメラの普及で当たり前になった。写真を保育の時に数枚取っておき、それに後で、数行程度コメントをつけるのである。要領よくやれば20分程度もあれば十分にできる作業である。それを保護者に見せることも広がってきた。保護者に幼児教育のあり方を理解してもらうことを日々の具体的な姿を伝えることで可能にする。同時に、保護者自身の子どもが毎日を楽しく過ごし、そこから成長を遂げていることを明らかにする。子どもたちにも見せて、振り返りとその後の活動の計画の参考にすることも増えてきた。

同僚同士の討議の材料としていくことはもちろんである。その際、要領にある資質・能力の3つの柱、5つの領域のねらい・内容、また幼児期の終わりまでに育ってほしい姿などを視点として活用できる。それらの視点から果たして子どもはそういう力を十分に発揮できているだろうか。さらに伸びていく機会となっているだろうか。それを活動を発展できるようにして、学びを実質のあるものにしていくには次にはどういう援助が大事になるだろうか。そういった検討をすることが保育の質の向上の進める上での要となる。

第三に外部からの参観を増やし、また専門家による助言を受け入れる体制を作ってはどうだろうか。互いに保育を見合い、参考にすることは保育への多様なあり方を知ることで保育への関わり方を豊かにしていくことにつながる。見てもらって、その立場からの意見をもらうことは時に厳しいこともあっても、多くは励ましになる(むしろ励ましになるようなことを言ってもらうようにする設定が必要である)。自治体などに設けた「幼児教育センター」などに置かれる幼児教育アドバイザーが要領の考え方と園の理念の双方を大事にしながら、違う視点で気付いたことを言ってもらえることも力になる。