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相手の口を見る赤ちゃんほど音声を模倣することを発見 !

-=京都大学大学院・武蔵野大学他の研究チーム=

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京都大学大学院教育学研究科・明和政子 教授、武蔵野大学教育学部・今福理博 講師、追手門学院大学心理学部 ・鹿子木康弘 准教授らの研究チームは、 前言語期の6ヶ月児69名を対象に、発話者の口を見る傾向が強い乳児ほど、音声模倣を行うという新たな事実を発見した。同時に、発話者が乳児とアイコンタクトをすると、音声模倣が促進されるという事実も明らかにしました。この研究成果は、2019年4月13日に国際学術誌「Developmental Science」のオンライン版に公開されます。

●概要
周囲の人が発する音声を真似すること、「音声模倣」は、ヒトの言語獲得において重要な役割を果たすといわれています。しかし、乳児がどのように音声模倣をしながら言語を獲得していくのか、その具体的な過程についてはわかっていませんでした。
京都大学大学院教育学研究科・ 明和政子 教授、武蔵野大学教育学部 ・今福理博 講師、追手門学院大学心理学部・ 鹿子木康弘 准教授らの研究チーム(*)は、 前言語期の6ヶ月児69名を対象に、発話者の口を見る傾向が強い乳児ほど、音声模倣を行うという新たな事実を発見しました。同時に、発話者が乳児とアイコンタクトをすると、音声模倣が促進されるという事実も明らかにしました。乳児は、複雑な言語環境に適応するために、音声に加えて発話者の顔に含まれる多様な情報を効果的に利用しながら音声模倣を行っていきます。本研究の成果は、言語発達の支援法として、乳児の顔を見つめながら発声を誇張して働きかけることがきわめて重要であることを示しています。
この研究成果は、2019年4月13日に国際学術誌「Developmental Science」のオンライン版に公開されます。
*その他の共同研究者:David Butler(ISN Psychology講師)


1.背景
社会的な場面において相手の行為を模倣することは、新たな行為を効率的に学習すること、さらには、世代を超えて知識や技術を伝承すること(文化の蓄積)を可能にする、きわめて重要な認知能力です。たとえば、他者の音声を真似る「音声模倣」は、言語獲得において重要な役割を果たすと言われています。これまでの研究によって、ヒトは生後5ヶ月ごろまでに「あ」、「い」、「う」といった母音の音声を模倣し始めることがわかっています。しかし、他者からのどのような情報が音声模倣を促進する鍵となるのか,という点についてはわかっていませんでした。私たちの研究グループは、「発話者の口の動き」や「アイコンタクト」といった視覚情報が、音声模倣の促進に関連すると予測し、次のような実験を行いました。


2.研究手法・成果
<実験1>では、生後6ヶ月児46名を対象に、母音(「あ」、「う」)を発する発話者の顔に対する視線反応と、音声模倣反応を記録しました。その際、(1)音声模倣時にどこを見ているか(知覚)、(2)実際にどの程度音声模倣を行うか(産出)の2点に着目しました。具体的には、発話者の通常の顔情報(正立条件)と、顔情報を利用することが難しい上下180°回転させた顔(倒立条件)の2種類のどちらかひとつの視覚刺激をモニター上に提示し、同時に発話音をスピーカーを通して聞かせました(図a)。その結果、倒立条件に比べて正立条件の視覚刺激を提示したときに、乳児は音声模倣を頻繁に行いました。さらに、正立条件においては、発話者の口唇部を長く注視した乳児ほど、音声模倣の頻度が高いことがわかりました(図b)。
<実験2>では、乳児23名にアイコンタクトをしている発話者(直視条件)と、目を逸らしている発話者(逸視条件)のどちらかひとつをモニター画面に提示し、同様に発話音を流しました(図c)。その結果、逸視条件に比べて直視条件のときに、乳児は頻繁に音声模倣をしました。さらに、直視条件と逸視条件の双方において、発話者の口唇部を長く注視した乳児ほど、音声模倣の頻度が高いこともわかりました。
これら一連の結果は、前言語期の乳児において、発話者の顔情報、とくに口唇部の動きやアイコンタクトが音声模倣を促進する要因であることを示しています。乳児は、発話者の音声(聴覚情報)のみでなく、顔に含まれる視覚情報を同時に利用しながら音声模倣することで、言語を学習していくと考えられます。


3.波及効果、今後の予定
言語を獲得する以前から、乳児が母音を模倣するという事実は、1990年代に示されました。しかし、音声模倣が生じるメカニズムについては、現在まで未解明のままでした。本研究は、乳児はただ自動的に聴覚情報を模倣しているだけでなく、発話者の口の動きやアイコンタクトといった、他者の顔情報からの影響を強く受けていることを示しました。音声に関連した口の動き(視覚と聴覚情報が同期して知覚される情報)を積極的に利用し、他者の視線方向から「自分に」注意が向けられていることを知覚することで、乳児の音声模倣は促進されるのです。
今後は、本研究で明らかとなった乳児の音声模倣時の知覚―産出の関係が、その後にみられるより複雑な語彙獲得の個人差とどう関連するかを解明することが課題となります。その解明により、科学的根拠(エビデンス)に基づくヒトの言語発達の本質的理解、さらには言語発達の新たな支援法の開発を可能にすることが期待されます。

4.研究プロジェクトについて
本研究成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって行われました。
(1) 文部科学省科学研究費補助金 基盤(A)(No. 17H01016、代表:明和政子)
(2) 文部科学省研究費補助金 新学術領域研究「構成論的発達科学」(No. 24119005、代表:明和政子)
(3) 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業 「センター オブ イノベーション(COI)プログラム」
(4) 平成27-29年度 公益財団法人 前川財団奨励費(代表:明和政子)
(5) 文部科学省科学研究費補助金 特別研究員奨励費 (No. 17J07474、代表:今福理博)

<研究者のコメント>
複雑な社会・言語環境で育つヒトは、生後すぐから発話者の音声だけでなく顔に含まれる情報を巧みに利用して、言語を効果的に学習していきます。ヒトの脳と心の発達を科学的に理解し,そこで得たエビデンスを基盤とする子育てや保育・教育政策の提案、発達支援法の開発をおこなうことが大事だと思っています。


<論文タイトルと著者>
タイトル:Demystifying infant vocal imitation: the roles of mouth looking and speaker's gaze. (ヒト乳児の音声模倣の神秘を解き明かす:発話者の口への注視とアイコンタクトの役割)
著 者:Masahiro Imafuku, Yasuhiro Kanakogi, David Butler, and Masako Myowa
掲 載 誌:Developmental Science DOI: